タンゴのスペイン語辞典 Diccionario Tanguero よみもの


La fama de “El Tropezón”


《エル・トロペソーン》の名声


bohemios

 そしてわたしたちは、夜の最後のカフェでありバーである《エル・トロペソーン》に たどり着いた。それは、フェルナンデス Fernández と カスターニョ Castaño がやっている店で、バルトロメー・ミトレ Bartolomé Mitre 通りと カジャーオ Callao 通りがまじわるところにあった。そこには今日では国立銀行の支店が建っている。
 そこに集まってくる客たちが出会うのは、夜のカフェの もっとも有名なメーテレ(給仕長)であった。名前は アベリーノ・ファリーニャ Avelino Fariña といった。偏平足だったので、歩くのは不自由だった。でも彼はあらゆるところにいた、とくに、彼が必要とされるところには かならずいた。
 カフェ《ラ・アルモニーア La Armonía 》がスペイン演劇の関係者たちの大本営だったのと同様に、《エル・トロペソーン》は、アルゼンチン演劇界のそれだった。
 このレストランが名物にしていたのは、素晴らしいヒレ・ステーキに、フライド・ポテトと目玉焼きを付け合せ、グラス1杯のワインとパンひとつ添えて、これを「コンプレート completo(完全なもの)」と呼び、90センターボだった。そして、真夜中過ぎには、有名なプチェーロが出た。
 そこでは、舞台を離れて、役者たち、演出家たち、劇作家たち、演劇記者たちが、和気あいあいと、ただひとつの談話のつどいを共有していた――なにか議論が起こるまでは。(後略)


ホセー・アントーニオ・サルディーアス José Antonio Saldías 『忘れられないブエノスアイレスのボヘミアン生活』
“La inolvidable bohemia porteña” (1968, Editorial Freeland) より。
執筆は1946年で、ここでは1910年代のことを追憶しています。


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