タンゴのスペイン語辞典 Diccionario Tanguero


Z

zapada (サパーダ)

 強力に、荒々しくタンゴのリズムを刻むこと。イタリア語 “zappa” (ツァッパ=農具の鍬) が語源だそうだ。鍬 (くわ)をふりかぶって畑をガンガン掘って耕すように、リズムを出すわけだ。


zapar (サパール)

 タンゴ楽団・演奏家が「強いリズムで演奏しつづける」。一本調子、荒っぽすぎるというニュアンスを含んでいることば。


---¡Cómo zapan!

「なんてまぁ、乱暴な演奏だろう!」


zapatilla (サパティージャ)

 バンドネオンのリード lengüeta 穴に蓋(ふた)をする小さな木製の部品(外からは見えない)。外のボタンを押すと、それに連結したこの小さな薄い板がもちあがって空気を通し、リードが鳴る。ボタンを離すと、ばね仕掛けで、この板はまた穴をふさぐ。ふつうのスペイン語では、 サパティージャ は、簡単な靴(サンダルとかスリッパ)を指す。


zorro gris (ソーロ・ギリース)

 ふつうのスペイン語で「灰色の狐」(日本語では格の高さを誇示して「銀狐」)、そして「(高価な)銀ぎつねのコート」のこと。
 かつて、 José García y los Zorros Grises (ホセー・ガルシーアと 銀ぎつねたち) というタンゴ楽団があったが、これはヴァイオリン奏者で音楽学校を開いていたガルシーア (1910 - 2000) が、1936年に創立したもの。彼の学校で勉強した若い(したがって無名の)音楽家たちに、演奏活動の場をもたせるためにつくった(当時は不況で、音楽家は就職難だった)。メンバーは、安売りしていた灰色のフランネルのスーツをまとめ買いしてユニフォームにした。それを見て、ダンスホールのお客が “los grises” (灰色の男たち) と、からかい半分に呼んでいた。それを、音楽教師から転身した指揮者のユーモア感覚で 楽団名に取り入れたという次第(ホセー・ガルシーアでは、あまりにも平凡な名前で、覚えてもらえない)。


Y a la farsa del amor mentido
al alejarte del Armenonville
era el intenso frío de tu alma
lo que abrigabas con tu zorro gris.

嘘の愛の道化芝居から出てきたきみが
キャバレー《アルメノンビーユ》から遠ざかってゆくとき
それは きみの冷え切った魂だった、
きみが きみの銀ぎつねで守っていたものは。

――タンゴ «Zorro gris»(銀狐)1920年 作詞:Francisco García Jiménez
*カルロス・ガルデール Carlos Gardel 歌(1921年録音)。ギター:ギジェルモ・バルビエーリ Guillermo Brbieri/ホセー・リカルド José Ricardo ここをクリック


zurda (スールダ)

 心臓のこと。「左側」という意味から来たことば。


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