タンゴのスペイン語辞典

Diccionario tanguero

高場 将美 Masami Takaba


――はじめに――

タンゴのことば――ここでは、いわゆるアルゼンチン・タンゴのことです。
正しくは「アルゼンチンとウルグアイのタンゴ」と言わないといけません。
でも、長すぎるので、単に『タンゴ』と呼ぶことにいたします。
そのタンゴの、歌詞や曲のタイトルなどに、ふつうの辞書には載っていない、
あるいは表面的な定義では誤解を招くことばが、たくさん出てきます。
この『タンゴのスペイン語辞典』は、そんなことばを集めたものです。
わたしは、タンゴの歌の魅力にとりつかれて
――歌っていたアーティストの魔力だったかもしれません――
スペイン語を学びはじめ、専門の大学にまで行きました。
でも、この辞書には学校で習ったことはひとつもありません。
日本ではだれも教えてくれませんでした。
その後手に入れた、アルゼンチンとウルグアイの数冊の本を読み、
アルゼンチンとウルグアイのタンゴ・アーティストやその他の人たちとの
直接・間接(レコード)の接触から感じ取って、学んできたことです。
なお、この辞書に載っていることばは、タンゴを生み、育てた環境の産物です。
その環境がなくなり、タンゴ伝統が薄くなるとともに、
これらのことばは使われなくなり、アルゼンチンとウルグアイの人間にさえも、
若い世代には理解されなくなりました。
死語になったものも少なくありません。
でも、タンゴの歌詞は、貴重な民衆文化の表現で、時代を超えた価値があります。
往年の歌手たちのレコードは、消えることがありません。
これらのことばは、その中で生きつづけています。

*この辞書は、まだ発展途上で、
出てないことばが、た〜くさんあります。
完成するのは、いつになることか!
いつも時間を見つけては(順不同ですが)増補をつづけておりますので、よろしくお願いします。
(かなり大幅に、間違いを直したり、書き足しなどもしています)
なにかありましたら、下記へメールください。
(できるかぎり、メールにてお返事します。また内容によっては、この辞書にも反映させます)
japalunfa@gmail.com


――タンゴのスペイン語とは?――

この辞書に収録したのは、次のような種類のことばです。

§ルンファルド
本来のルンファルドは、19世紀後半から、ブエノスアイレスの犯罪者たちが使っていた隠語です。
一般の人たちに知られたら、もう隠語とは呼べませんが、
後には、ブエノスアイレスやモンテビデオの街の独自のことばを、
犯罪と関係ないものもルンファルドと呼ぶようになっています。
一言でいえば、ルンファルドは、これらの街の「スラング」ですね。
ただし、タンゴの歌詞や題名に出てこないことばは、
由緒あるルンファルドでも、この辞書に入っていないかもしれません。
1950年代以後の新しいことばも入っていません(年代はわたしにはわからないことも多いですが)。

ルンファルドについて、くわしくは辞書のほうをお読みください。lunfardo


§地方的なスペイン語
ルンファルドとの境界ははっきりしないときもありますが、
アルゼンチンとウルグアイでよく使われることばで、
一般の辞書の定義とニュアンスが違うものなどは、入れました。
他のスペイン語諸国でも使われているものがあると思いますが。
タンゴの歌詞には出てこなくても、代表的な(?)
古い時代からのアルゼンチン=ウルグアイの都市のことばを収録しています。
ただし、公序良俗に反することば、人前で口にしてはいけないことばは
――だいたいは男女のセックスに関連したことばです――
実は公衆の前で非常に多用されていても、
収録しません。タンゴの歌詞には絶対出てきませんしね。
直接的に娼婦を意味することばはタンゴには絶対に出てきません。
客引きの男やヒモはたくさん出てきます。
おかしな道徳観ですが、そういうものだから仕方がないです。
ただし――また「ただし」ですが――19世紀末〜20世紀ごく初めのタンゴの題名には、
下品なことばを連想させるものがあります。
あるていど広く親しまれている曲は、この辞書に入れました。
さらに、一般的なスペイン語でも、アルゼンチン=ウルグアイの都市の民衆文化や生活感情に
深く根ざしていることばも、タンゴの歌詞に出てこなくても収録しています。
都市も大草原の一部なので、ガウチョのことばもかなり入ってきます。
このような生活文化の中の用語は、だいたい1940年代の初めより前に生まれたタンゴ音楽家の日常語だったものを採りました。

§音楽に関する用語
伝統的なタンゴに関する特殊な専門用語を入れました。
一般的な音楽用語は、特殊な使いかたをされる場合を除き入っていません。

§人名、地名
1940年代までのタンゴの、歌詞やタイトルに出てくる人名・地名で、
アルゼンチン=ウルグアイ以外の人には、ピンと来ないようなものは、
この辞書で解説しています。
タンゴとその他の音楽の演奏家・歌手・作詞家・作曲家は、独立した項目としては入りません。
詩人・文学者などでタンゴやルンファルドに関連のある人は入れます。


――この辞書の諸要素――
文法の用語はなるべく使わないようにしました。
アルゼンチン=ウルグアイのことばは、他のスペイン語と違う文法を
もっています。それについては別記事を書きましたので、
下の目次のリンクをクリックしてお読みください。
見出し語:ふつうの辞書と同様にABC順の配列です。ÑN の次にあります。
ことばは少ないですが、数字の項目もあります。
発音:カタカナで、現地の音になるべく近づけた表記をしました。これまでの慣習は無視しています。
……とはいうものの、書いていく途中で迷いがあり、不統一が出ています。むずかしい!

カタカナ表記はどのようにしても問題がありますが……
別のホームページの付録に、わたしが書いた記事があります。⇒ カタカナ表記

説明:日本語に「訳す」ことはほとんどの場合不可能ですので、ニュアンスを感じていただきたいです。
簡潔な「定義」なんてありません。ひとつひとつの単語は、他のことばで説明できない独自の命をもっている……
説明がいたらなくて申し訳ありません。
用例:出典が記されてないものは、わたしがどこかで聞いたか、自分で考えたものです。
歌詞は、楽譜などで出版されたものよりも、歌手の録音したことばを採りました。
ほとんどの場合、そのほうが、より良い表現になっています。
曲名などの日本語訳は、いわゆる定訳もありますが、
わたしが考えたもの、訳というより説明もまじっています。
なお、用例の表記では、発音されないこともある s の音も文字にしてあります。参照 ⇒ 発音と正書法
その他:タンゴ歌手の録音で、ことばを生きて
感じていただけるようにします。オーディオはMP3ファイルです。
*内部・外部のリンクは、すべて黄色地の文字をクリックしてください。


目次

1,2,3 (数字) A B Ca-Ce Cha-Clu Co-Cu D E F G H I J K L Ma-Me Mi-Mu N Ñ O Pa-Pi Pla-Pu Q R S T U V W Y Z

タンゴのスペイン語文法

基礎知識 タンゴのスペイン語

*「そんなことより、本文を早く完成させろ」という声は、わたしの中からも聞こえてきますが、
アルゼンチン〜ウルグアイ人のエッセイや詩を紹介することにしました。ことばの背景を感じるために……。

アルヴァロ・ジュンケ詩格子のあいだのマドリガール(スペイン語朗読・原文と日本語訳)
J・A・サルディーアス筆《エル・トロペソーン》の名声(日本語訳) J・S・タロン筆タンギスタたち(日本語訳)
ロベルト・アールト筆クランデーラとサンテーラ同業組合(日本語訳) R・アールト筆自分でズボンにアイロンをかける男(日本語訳)

◆これらの記事のリンク・引用などは自由です。引用なさる場合は、ここからの引用であることを表示してください。


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タンゴ百年史

「タンゴ100年史 電子版」
[Kindle版]発売

わたしが今から30年あまり前に書いた本『タンゴ100年史』は、久しく絶版になっていましたが、
このたび若い音楽ファンの人たちが電子書籍化するプロジェクトを組んでくれました。
内容について、その後発見された細かい情報などありますが、書き直す必要はないと信じて、そのままの内容で、2014年12月11日「タンゴの日」に発売になりました。
定価1250円です。上・下巻まとめての発売です。
Kindle はもちろん、スマートフォン、タブレットでお読みいただけます。今のところ、コンピュータでは読めません。
下記から、ご購入いただけます。

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